旧田中家住宅(近江商人亭)は、近江鉄道愛知川駅の南東約300mに位置し、旧中山道に面する西側に奥行きの深い敷地に建っています。
現在は、平成6年に開業した料亭、「近江商人亭」として活用されていますが、昔は、麻織物商を営んでいた田中家の別邸でした。
既に明治25年(1892)に建てられていた南土蔵を再利用しながら、大正8年(1919)に主屋を新築し、続いて茶室、北蔵、大広間を建設、庭園を整備し、現在の屋敷構えが完成しました。
近江商人といえば全国的にその名を知られた存在であり、豪商を数多く産出しことで有名です。代表的な近江商人としては、八幡商人、高島商人、日野商人、湖東商人がありますが、これらの多くは江戸時代に発展したのに対し、愛知川の商人は明治以降の「近代」にピークを迎えました。
そんな愛知川の豪商のひとつとして田中家の「田源」があります。初代・田中源治(1791-1864)は、現在の秦荘(はたしょう)町の生まれで、愛知川に移住したのち、蚊帳の行商を行い、京都、江戸へと商いを広げていきます。続く2代目(源蔵、1821-1892)の時代に、東京日本橋に店を構えるようになり、本宅を愛知川、本店は京都、支店を東京に持つことになりました。
「田源」はその後、3代目(竹次郎、1860-1918)の時代に、東京方面を中心に売上を伸ばして発展を続けます。